日本生物工学会は、学会発足101年目にあたり、新たな試みとして優秀な発表を行った学生に対して「学生優秀発表賞」を授与することになりました。審査対象となる講演が241件あり、厳正な審査の結果、本学大学院環境共生学研究科 食品バイオ工学研究室(松崎研究室) 博士前期課程2年生の 永田妃奈子さん と 板倉真優さんの2名が【学生優秀発表賞】をそれぞれの研究テーマで受賞しました(各研究室2名までのエントリー。総エントリー数241件)。なお、板倉真優さんは先日の化学関連支部合同九州大会(2023)(日本農芸化学会西日本支部)での優秀発表賞に引き続いての受賞となります。
詳細は以下のとおりです。
学会大会名:第75回日本生物工学会大会(2023)
開催日時:令和5年9月3日(日)〜9月5日(火)
開催地:名古屋大学 東山キャンパス(名古屋市)
公益社団法人 日本生物工学会 大会HP(学生優秀発表賞の審査結果について:
https://www.sbj.or.jp/2023/news/news_student_award_20230915.html)
【学生優秀発表賞】
受賞者名:◯永田妃奈子(環境共生学研究科博士前期課程2年生)・善藤威史(九州大学大学院 准教授)・松崎弘美(環境共生学部 教授) ◯:発表者
所属:食品バイオ工学研究室(松崎研究室)
受賞課題:「たくあん漬から分離した乳酸菌Lactococcus lactis PJR24が生産するバクテリオシンの精製と特性」
研究概要:バクテリオシンは、細菌が生産する抗菌ペプチドまたはタンパク質の総称であり、一般的には近縁種に対して抗菌作用を示す。特に、乳酸菌が生産するバクテリオシンは安全性が高いことから天然の食品保存料として期待されている。熊本県阿蘇地方で製造された「たくあん漬」から分離したバクテリオシン生産乳酸菌Lactococcus lactis PJR24は新規バクテリオシンを生産すると予想された。本研究では、PJR24株の培養液上清から70 %飽和硫安沈殿、透析、陰イオン交換クロマトグラフィー、限外ろ過により、約10 kDaのバクテリオシンを精製した。PJR24株バクテリオシンはpH 3-11の範囲で少なくとも50 %以上の活性を保持し、80 ˚C、30分の加熱処理でも抗菌活性を保持していた。また、近縁種のみならずListeria属やEnterococcus属細菌にも抗菌作用を示すことを明らかにした。
受賞者名:◯板倉真優(環境共生学研究科博士前期課程2年生)・宮原しろ沙(環境共生学部卒業生)・田中賢二(近畿大学 教授)・田口精一(神戸大学大学院 教授)・松崎弘美(環境共生学部 教授) ◯:発表者
所属:食品バイオ工学研究室(松崎研究室)
受賞課題:「透明な生分解性プラスチックを合成するCupriavidus necatorの分子育種」
研究概要:微生物が菌体内に合成・蓄積するポリヒドロキシアルカン酸(PHA)は、生分解性プラスチックの一つであるが、一般的に不透明であり使用用途が制限される。一方、乳酸(LA)および3-ヒドロキシブタン酸(3HB)ユニットからなる共重合ポリエステルのP(LA-co-3HB)は透明性・柔軟性・生分解性を有する。本研究では、水素細菌Cupriavidus necatorを宿主とした遺伝子組換え株を作製し、糖を炭素源として透明性が期待できる24.6 mol%のLA分率からなるP(LA-co-3HB)を合成することに成功した。また、温暖化の主要因であるCO2を炭素源として、蓄積率は6.8 wt%とまだ低いもののLA分率が8.2 mol%からなるP(LA-co-3HB)の合成にも初めて成功した。このように、CO2を原料として優れた性能の実用的な生分解性プラスチックをつくることは、環境に負荷をかけない持続型社会システムを構築するための大きな一歩であると言える。
【受賞にあたってのコメント】
(永田妃奈子さん)
この度、歴史ある日本生物工学会大会において学生優秀発表賞を頂くことができ、大変光栄に感じております。また、初めての試みとなる本大会での受賞を大変嬉しく思います。今回の受賞は、日頃から熱心にご指導いただいている松崎教授や多くの先生方あってのことと、厚く御礼申し上げます。また、ご協力頂いている同研究室の皆さんにも感謝しております。今回の受賞を励みに、これからより一層研究活動に尽力してまいります。
(板倉真優さん)
この度は、発足101年目になる歴史ある学会の節目において学生優秀発表賞を受賞することができ、大変嬉しく光栄に思います。松崎教授をはじめ、多くの先生方にご指導いただいて受賞することができました。研究にご協力いただいている共同研究者の方々、同じ研究室の皆さんにも感謝申し上げます。また、本大会を通じて多くの方々と対面にて意見交換ができたことは大変刺激となりました。今回の経験と受賞を励みとし、さらなる研究の発展の一助となれるよう、今後も精進します。
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